地方公務員法や国家公務員法で禁止されている公務員の副業ですが、認められる場合とそうでない場合があります。
漫画を描いたり売ったりする漫画家としての活動は、公務員の副業として禁止されているのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
Contents
1. 公務員が副業で漫画を描くのは禁止?
公務員の副業が法律によって禁じられています。
国家公務員の場合は
国家公務員法第103条 私企業からの隔離
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
国家公務員法第104条 他の事業又は事務の関与制限
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
地方公務員の場合は地方公務員法第38条
地方公務員法第38条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
で、副業は明確に禁止されています。なぜ副業が禁止されているのかという理由についても明確にされています。
・国公法第101条 職務専念の義務…本業に支障が出ないように
・国公法第99条信用失墜行為の禁止…本人、所属する職場、公務員自体のイメージや信用を守るため
・国公法第100条 守秘義務…副業をすることで公務員の守秘義務が侵されることがないようにする
というものです。このような理由で、公務員の副業は禁止されているのです。
ですが、公務員が禁止されている副業とは、労働収入のみ…。つまり、著作物の印税や資産運用、一定の条件を満たしていれば不動産賃貸による家賃収入を得ることは認められています。
では、漫画家としての活動はどうなるのでしょうか。漫画家として過去に描いた作品の印税を受け取ること…は権利収入を得ることですから、公務員でもOKです。ですが、今現在、漫画の執筆活動をして締切などがある漫画家として活動しているとなるとこれはちょっと話が別…ということにもなりそうです。
漫画家を副業にして公務員が処分を受けたという事例はありませんが、本格的な執筆活動は純粋な権利収入とは言い難い部分がありますので、もしかすると禁止規定に抵触するというケースもあるかもしれません。
1-1. そもそも副業とは
副業とは、本業以外に収入を得ることです。公務員が禁止されている副業は、労働収入のみで、資産運用や印税などの権利収入は認められています。
副業の労働形態は特に規定がなく、アルバイトや個人事業主でも本業とは別の収入源となる場合は、副業と呼ばれます。
1-2. 公務員が描いた漫画が副業になる場合
先ほども少しご紹介しましたが、公務員が漫画を描いて利益を得ることが副業になる場合は、原稿料や執筆料が発生する場合などです。これは、印税などの権利収入ではなく労働収入としてとらえることができます。ですので、許可なく漫画を描いて報酬をもらった場合は、公務員が禁止されている副業に該当する可能性があります。
公務員が副業を禁止されている理由として、本業に影響を及ぼすことがないようにというものがありますので、本業に影響を与えかねない執筆活動は禁止と考えるほうが良いでしょう。ですが、公務員が過去に描いた漫画の印税を受け取ることは、権利収入に当たりますので問題ありません。
2. 公務員が漫画を転売(せどり)したら副業になる?
インターネットビジネスの中でも人気があるせどりですが、せどりは副業に該当する可能性があるお小遣い稼ぎです。
もちろん、公務員がフリーマーケットアプリやオークションを利用して物を売ることがただちに副業禁止規定に抵触するという訳ではありません。不要品の処分程度であれば、副業とは言えないというのが一般的な見解になっています。
ですが、せどりとは高く売れる漫画を仕入れて転売するという方法ですから、これは副業に該当する可能性が高いといえます。
2-1. 転売(せどり)とは
せどりとは、転売ビジネスのことです。安く仕入れて高く売るという実にシンプルのビジネスで、フリーマーケットアプリやオークション、Amazonなどのシステムを利用することで素人でも簡単にせどりを始めることができます。
せどりは、古本用語 を元にしたもので「掘り出し物を第三者に販売して利ざやを稼ぐ」というれっきとした商行為がその語源になっています。フリーマーケットアプリやオークションなどを利用するという点では、不要品の処分と似ていますが、実質上、せどりは副業に該当する可能性が高いのです。
2-2. 公務員の漫画転売が副業になる場合
公務員がせどり…いわゆる漫画の転売をしてそれが副業に該当する可能性がある場合は転売目的で漫画を仕入れて転売した場合です。これは、転売ビジネスに該当しますし、継続性があればなおさら副業に該当する可能性が高くなります。
たくさんの漫画を古本屋さんやフリーマーケットアプリやオークションで売ったとしても、それが不要品の処分であれば副業に該当する可能性は低いといえます。
せどりをした公務員が処分を受けたという事例は今ところ見当たりませんが、継続的で事業性が高いせどりは副業に該当する可能性が高いことを知っておきましょう。
3. 公務員の副業に関する法律一覧
先ほどもご紹介しましたが、公務員の副業を禁止した法律は以下のものです。
国家公務員法第103条 私企業からの隔離
国家公務員法第104条 他の事業又は事務の関与制限
そして、禁止の理由としては
国公法第101条 職務専念の義務
国公法第99条信用失墜行為の禁止
国公法第100条 守秘義務
があげられます。
公務員は原則として副業は禁止されていますが、例外的に認められている副業もあります。資産運用や不動産賃貸、印税、講演会、地域貢献活動、家業の手伝いなどは公務員でも副業として認められます。
まとめ
公務員の国家公務員法と地方公務員法で、副業が禁止されています。過去に描いた漫画の印税を受け取ることは権利収入にあたるためOKですが、現役の公務員が漫画を書いて売るという活動は、労働…つまり副業に該当する可能性が高いと言えます。もちろん、許可を取れば可能ですが、本業に影響を与えない範囲という制限があります。
副業に該当するとしてバレてしまった場合は、処分対象になることも考えられますので、公務員が漫画を描いたり売ったりする場合は許可を取るなどの対応をしましょう。